エネルギーベストミックス研究会報告書

今後のエネルギーのベストミックスへ向けた課題と展望

九州大学エネルギーベストミックス研究会 2011年8月

要旨

今後のエネルギーのベストミックスへ向けた課題と展望

今後のエネルギーのベストミックスへ向けた課題と展望

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はじめに

20 世紀の物質文明を支えてきた石炭、石油等のエネルギー資源が、発展途上国の急速な経済発展に伴う価格上昇、資源の枯渇、さらには、環境汚染、CO2 排出による地球温暖化といった多方面からの問題を抱え、資源・エネルギー戦略の構築が求められる状況にあり、とくに、資源のない日本にとっては、様々なエネルギー資源を戦略的に組み合わせて常にベストな解を選択していくことが必須の課題である。
 
そこで、九州大学炭素資源国際教育研究センターでは、2009 年から関係者による勉強会「エネルギーベストミックス研究会」により議論を重ねてきた。
 
3/11 東日本大震災が起こり、多くの尊い人命と長年積み重ねてきた資産が失われた。さらに、福島第一原子力発電所事故は、原子炉本体だけでなく周辺地域の放射能汚染の収束に長期間を要する事態となっている。これらの災害、事故は、わが国のエネルギー戦略の基本方針を再度考え直すという重い命題を提供した。研究会にとってもこの事態は、3月までの活動によりまとめつつあったエネルギーベストミックスの方向性を再点検し、「3.11 後のわが国のエネルギー戦略」の論点整理、冷静な分析と方向性の提案をおこなう契機となった。
 
本報告は、震災後に急速に必要性が認識されているエネルギーの安定供給の観点から、その論点を整理し、「今後のエネルギーベストミックスのあり方」としてまとめたものである。
 

<要点>

エネルギーのベストミックスを考える視点
  • エネルギーは、あらゆる経済活動に不可欠な存在。
  • 日本はエネルギー資源に乏しく、地震や津波等自然災害を受けやすい地域にあり、それらを勘案したエネルギーの確保と安定供給体制の確立は不可欠。
  • エネルギー供給の安定性の観点から多様化により確保されるべき。
  • エネルギーのセキュリテイ、経済性、調達可能性など多様な要因を考慮して、エネルギー源の最適な組み合わせを決定すべき。また、多様なエネルギーの利用を進めるには、エネルギー技術の開発・展開について、タイムスパンを考慮した計画が必要。
エネルギーベストミックスの3つの課題
  • エネルギーの確保について、電力供給不足、資源枯渇への対応、温暖化対応の3つの課題に直面。
  • 電力供給不足に対しては、短期的には火力発電などによって代替されるが、長期的には、再生可能エネルギーの導入拡大を踏まえ、電力、ガス、石油の適切な組み合わせを整えていくべき。
  • 資源枯渇に対しては、化石燃料への依存度を低下させるとともに、より効率的な化石燃料の利用法の開発・展開をはかり、省化石資源を推進。
  • 温暖化対応は、ゼロエミッションのエネルギーへの転換が必要。
エネルギーの供給を巡る課題(エネルギー源について)
  • 化石燃料(ガス、石油)への依存は当面の間続くと予想。それを前提にした、供給の安定化、利用方法の高効率化の技術開発が重要。
  • 原子力は、電力の30%を占めており、いったん事故が生じれば、大きなリスクを伴う技術であるが、短期間にこの電源を他に代替することは困難。
  • 再生可能エネルギー(太陽電池、風力)は天候の影響をうけ供給安定性が悪い、電力網を不安定化する、蓄電池との併用が必要、など多くの課題があり、これらについてタイムスパンを考慮した技術開発と導入拡大が必要。
今後の電力供給について
  • 大規模集中型の電力供給から再生可能エネルギーを利用した分散型電力供給への移行は最適解への有力なアプローチ。最適解実現のためには技術開発・制度改革が必要。
  • 各電力会社供給余力を高めるために、予備電源の確保や電力連系線の増強による緊急時の相互融通システムの強化が必要。
  • 電力供給の適切さは複数の指標によって測られ、指標の優先度によって電力供給の最適解は変わる。例えば、緊急時には、品質規格(周波数や電圧の許容幅)の緩和による供給能力の増強も可能。
  • 再生可能エネルギー導入時には、電力供給システムや需要家を含めたシステム全体に柔軟に対処する必要があり、スマートグリッドが有効。
電力需要抑制について
  • 業務用については、必ずしも必要でない消費の削除により15%節電可能であることが判明。
  • 15%以上の大幅な需要削減については未だ不透明。ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB:Zero Energy Building)化へのビジョンでは、新築低層建築物へのトップランナー技術や高度な制御技術の導入、建物躯体の高断熱・高気密化および日射遮蔽が主たる方策で、一方省エネ改修コストの高い既存ビルの対策は課題残。
  • エネルギー使用と輪番休業など新たなワークスタイルの確立、エネルギー使用の時間シフトを考慮した操業、立地選定にエネルギー使用の観点を導入、等の対策実施。
  • 自主的な節電では需要抑制に限界があり、デマンドレスポンス(DR:Demand Response)を活用した制御が有効。
  • 家庭での蓄電池の購入やVehicle to Home 等の蓄電池利用策は、需要サイドでの対応性を頑強にする手段として有効。また、電気料金の引き上げも需要抑制効果期待。
エネルギー供給の課題
  • 大震災では、石油の供給途絶が発生した。石油は、連産構造を持つので、容易に製品バランスの変更が出来ない。複数の資源を集約的に利用する生産システムが緊急時対応に有効である。
  • ガス供給は石油や電力供給の代替となる。ガス供給手法の多様化は、エネルギー供給の平準化にも寄与する。また、ガス会社間のパイプライン整備など、緊急時のリスク対策を、不可欠施設の観点から考えるべきである。
  • 太平洋側に基地が集中しており、分散立地を考慮すべき。
まとめ
  • 多様なエネルギー供給技術には一長一短がある。それらの横並びで客観的な比較が必要。
  • 現在の電力供給のあり方は踏まえるが、将来の議論においては現在の論理に縛られる必要はない
  • これまでの電力は使用(需要)に合わせて供給するものであるが、将来の電力は供給に合わせた使用の観点も重要であり、供給対策は需要対策と一体で議論すべき。
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