革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電プロジェクト

1. プロジェクト概要

Cool Earth 50が提唱する「世界全体の温室効果ガス排出量を現状と比較して2050年までに半減する」というCO2削減目標を達成するためには、省エネルギーやCO2負荷の小さいエネルギーへの転換、再生可能エネルギーの導入、原子力発電の導入等に加えてCO2の分離・回収・貯留(Carbon dioxide capture and storage, CCS)も視野に入れた革新的な技術開発が必要とされています。石炭火力においても、今後は発生するCO2を分離・回収・貯留することが期待されていますが、CCSには多量の付加的なエネルギーが必要となることから一層の効率改善も重要です。
革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電プロジェクトにおいては、CCSの技術的フィージビリティーの検討と効率を大幅に向上させるための基盤研究を併せて実施します。効率についてはCO2回収後において、送電端効率42%(HHV基準)を実現させる基盤技術を確立することを目的とします。

2. 研究課題

本課題においては、石炭ガス化システムから回収したCO2を酸化剤の一部とすることにより、石炭ガス化システムの効率を大幅に向上するプロセス(図1)を考案しました。このCO2循環回収型次世代IGCCシステムにおいて、CO2による石炭ガス化性能向上効果の解明と実証、乾式ガス精製技術の最適化、実用規模プラントのフィージビリティー・スタディ(FS)を研究課題とします。長期的には加湿CO2回収利用も視野に入れています。また、本技術について、アジアなど環太平洋地域の多様な石炭に対する適応性を検討します。これらの課題を電力中央研究所と九州大学が協力して基礎基盤・応用の両面から技術完成を目指します。

図1 CO2循環回収型石炭ガス化火力発電システム

3. 研究分担

電力中央研究所
「CO2回収型次世代IGCCシステム基盤技術の開発」
① 酸素- CO2ガス化技術の開発
 (ⅰ) 基本ガス化反応の解析・評価
 (ⅱ) CO2ガス化反応機構の解明と反応促進
 (ⅲ) 数値解析によるガス化炉最適化検討
② 高CO条件における乾式ガス精製の最適化
③ 実機フィージビリティ・スタディ(FS)

九州大学
「O2/CO2石炭ガス化反応機構の解明とアジア地域の多様な石炭への適用」
① 石炭およびチャーの構造とガス化反応性
② 石炭中の鉱物の分析と挙動、ガス化への効果
③ ガス化において生成する灰の物性・構造・挙動の解析
④ COリッチ生成ガスの操作性
⑤ 石炭の前処理
⑥ ガス化炉内流動解析

4. 九州大学の研究

① ガス化解析
O2/CO2ガス化は、CO2のガス化能が期待される反面、N2と比較してCO2の強い物理吸着によるO2の拡散・物理吸着阻害が予測されることから、CO2共存によってガス化反応がどのように影響されるか、石炭・チャーの構造および共存鉱物がその影響をどのように改変するかを明らかにし、より高効率のガス化を実現する。
② チャーの解析
ガス化されるチャーの特性・構造がO2/CO2ガス化に影響することが予想できることから、チャーの構造を新しい発想から細孔、表面化学、バルク化学の3面について解析する。XRD、Raman、13C-NMR、SEM、TEM、XPS、窒素吸着などを利用して、チャーの立体的化学構造を明らかにする。また、チャーの構造を考慮した反応速度式の提案を目指す。
③ 灰の解析
ガス化反応において、石炭中の鉱物はスラグ、フライアッシュ(溶融灰、付着灰)として操作に大きな影響を有すると同時に、ガス化反応の触媒あるいは阻害剤としても働く。そこで石炭・チャー中の鉱物の分析とその熱処理・ガス化環境での変化ならびにガス化への影響を調べる。ここでもO2/CO2雰囲気による変化に留意する。特に、流動排出性、付着性について精度の低い元素組成に基づく予測や制御を越えてガラス構造を溶融・固化の状態で解析し、特性との相関を明らかにする。
 (ⅰ) XRD、多核固体NMR、Raman、XRF、SEM、TEM、窒素吸着により鉱物の化学種および寸法・形状を明らかにし、その熱処理・ガス化による変化を調べる。
 (ⅱ) 石炭・チャー中の鉱物のガス化反応への効果を、TGA、高圧TGAおよびドロップチューブファーネスを用いて明らかにする。
 (ⅲ) 鉱物の効果を取り込んだガス化反応速度式を導入する。
④ 本ガス化におけるシミュレーションの確立
市販シミュレーターの応用からスタートして、ガス化反応に関与する物質の特性・構造の解析を取り込んだシミュレーターへの進化を究明する。