CO2排出削減に関して思うこと

新日本製鐵(株)
松宮 徹

COP3の京都議定書批准国は2010年目標を満たすべくCO2排出削減に鋭意励んでも目標値に満たない部分は排出権取引で賄う、所謂Cap and Tradeが提唱されている。一方、京都議定書で排出量削減に参画している国の割合が少なく(鉄鋼生産量では全世界の40%しか占めていない)、最大のCO2排出国である米国が加わっていない。また、参画国間でも、それぞれCapの値の厳しさが異なり、Capの緩い国からの排出は許され、Capの厳しいCO2排出削減先進国は、CO2の排出量が極めて少ないにも拘わらず、排出権を買わなければならないという矛盾点を含んでいることは御存知の通りである。これに対して、2007年初めに、世界鉄鋼連盟からSectoral Approach という、鉄鋼業のSectorにおいて、より高い自主削減目標値を立て、全世界のCO2排出量全体を削減する対処法が提案された。すなわち、削減技術の先進国技術の世界への移管を促進してCO2排出の大きな幹を切る方が、Cap and Tradeより遥かに大きな効果が挙げられるのである。APP(クリーン開発と機構に関するアジア太平洋パートナーシップ)参加7国間で鉄鋼製造プロセスにおける省エネ技術のBAT(手に入る最高技術)を、移管、普及させることで10-15%のCO2排出削減が期待される。また、APP参加国と京都議定書批准国を合わせると、その中での鉄鋼生産額は全世界の90%以上を占めており、京都議定書批准国内で行う排出削減に比べ、広く世界をカバーした取り組みが出来る。この世界鉄鋼連盟からの提案を聞いて思い当たったのは論語にある「これを導くに政を持ってし、これを斉しうするに刑をもってすれば、民免れて恥無し。これを導くに徳をもってし、これを斉しうするに礼をもってすれば、恥じかつ至るあり。」という教えである。Cap and Tradeではこれを満たしさえすれば良いのであろう的感覚が強いのに対して、Sectoral Approachでは本当のCO2排出を減らすにはどのように取り組めば実が上がるのかを力を合わせて考えを巡らす姿勢が伺えた。徳と礼を持って臨めば、抜け道を考える者はいなくなるのだが、政と刑では完全に抜け道を防ぐものでないと笊法になってしまう。前者でなければ真のCO2削減の駆動力が生まれないと考えるし、そちらを選びたい。しかし、もし、後者のアプローチを選ぶならば、以下の方法を提案したい。すなわち、鉄鋼製品で何であり、それが販売される時点で、国産品、輸入品に拘わらず、その製品が製造される全過程で排出したCO2量に応じて、製品に環境税をかけることである。CO2排出量だけでなく、整備されたLCA指標に基づいて、その製品がどれだけ地球環境に負荷をかけて生産されたかによって環境税をかける。そして、ある会社が環境負荷を管理して保証できるならば、その値をエコ・タグに付けてLCA指標として用い、もし、環境負荷を管理・記録してないならば、デフォルトのLCA指標を用いることにすれば、環境にやさしく生産された製品の環境税が低くなり、その製品が売れ易くなり、地球全体で環境負荷の増大を押さえることが出来る。環境税を課すかどうか、あるいはどれだけ掛けるかは各国によって決めれば良いが、製品にかける限りは、地球のグリーン化にインセンティブを与える。我が国は環境立国を標榜して、製品に環境税を課すことを宣言してはどうだろうか。ただし、この環境税が発展途上国からの輸入の実質的な関税になってしまわないように、省エネ技術の発展途上国への移管の支援と併せて進めるべきである。一方、環境税を生産に掛けることが考えられているが、これでは、もし、1t当たりのCO2排出量の最も低い我が国が環境税を課し、CO2排出量の多い他国が環境税を課さないとするならば、CO2排出量を少なくして生産している我が国の鉄鋼製品の価格競争力が無くなり、CO2を多く出している他国の鉄鋼製品が売れて、地球全体ではCO2排出を増やす結果となるので、これは避けるべきであると思う。